週刊ダイヤモンド 2021年2月13日号 税理士業界の特集について考える
先日、週刊ダイヤモンド(株式会社ダイヤモンド社)で「会計士・コンサル・税理士 序列激変」というタイトルの特集が組まれました。お読みになった方も多いここと思います。そこで、私の見解を以下にお伝えしたいと思います。
「コロナで露呈!税理士の実力」について
まず最初に「コロナで露呈!税理士の実力」とタイトルを付けられた記事の内容に関してお伝えしたいと思います。記事の主旨としては
理由1.コロナ禍で開始された助成金制度や融資を含めた資金調達等に関する情報提供がない
理由2.経理の合理化などIT化に関する提案がないばかりか、会計事務所の方がむしろ遅れている
理由3.それなりの顧問料を払っているのに資金調達や経営アドバイスが得られない
お読みになってみなさまいかがでしょうか?
昨年の春先の私のYouTube ならびにブログをお読みの方はご存じかと思いますが、既に「2020年の5月・6月・7月くらいから顧問先の解約が増えるので注意しましょう」と述べています。
それは、コロナの感染拡大が進む中、また緊急事態宣言が発令された際の会計事務所の対応があまりにも悪かったからです。(勿論、全ての事務所ではありません)例えば、
- 資金調達を急ぐ経営者に対し、緊急融資対策の情報も伝えもせず、お客様から聞かれて初めて答える
- 答えるならまだしも「政策金融公庫や市区町村で受付けているのでそちらで聞いて下さい」と言う
- 試算表の提出を求める経営者に「今確定申告と重なってそれどころではありません」と答える
- 資金が足らなくて困っている経営者に「こういう時のために自己資本比率は高めなければいけません」と偉そうに教える
など、日頃からそれなりの顧問料を頂戴し、「我々は困っている経営者の力になります」とか言っておきながら全く頼りにならない会計事務所がたくさんあったからです。勿論、この機会に親身に対応されていた事務所も当然ありましたので、皆様の事務所はそうではないと思います。
ただ、上記のような対応の会計事務所があまりにも多かったため、私は昨年の段階で今後の解約ラッシュを予想した訳です。
顧問税理士の解約には、実はPhase1.とPhase2.がある
同時に私は「顧問税理士の解約には、実はPhase1.とPhase2.がある」と予測し、Phase2.はまさにこれからだと思いますのでそれをこれから解説いたします。
Phase1. 単価の高い良いお客様から離れる
まずPhase1.は「単価の高い良いお客様が離れる段階」です。
コロナ発生から今までに既に解約した経営者は「高い顧問料を払っているのでしっかりやってくれると思ったのに、本当に困っている時には何もしてくれないじゃないか!」という怒りにも似た不満を感じ、「だったらもっと高いお金を払ってもいいからしっかり対応してくれる会計事務所に移るよ!」と言って、解約をしてしまった方たちです。
「えっ?じゃあ、単価の低い顧問先は移らないの?」と思われた方もいらっしゃると思いますが、移らなかったとは申しませんが、もともと顧問料が安い顧問先は初めから会計事務所に対するニーズはうすいので「対応が悪いから怒って解約する」という行動には至らなかっただけと私は考えています。
ですからPhase1.では「高い顧問料を払ってでも税理士事務所にしっかりやって欲しい」というお客様が離れてしまいました。
勿論、全ての優良顧客が解約した訳ではありませんし、週刊ダイヤモンドに書かれているように、コロナが全国に広がってから最初の3月決算を終えて動く企業も多いでしょうから、今からでもお客様との関係構築はしっかり行うことをお願いいたします。
Phase2. 不要なサービスを削ぎ落し、必要なサービスに特化した安い事務所に移る
次の段階がPhase2.で「不要なサービスを削ぎ落し、必要なサービスに特化した安い事務所に移る」です。
これはどういうことなのかを時系列でお話します。
- 多くの企業が緊急融資&持続化給付金で半年~1年程度の資金を準備した
- その上で、人件費や家賃といった大きな固定費を削減し、様子を見た
- しかしながら、コロナが予想以上に長引き、資金も底をついてきた
- そのため、今年は”万円単位”の小さな固定費削減に着手し、会計事務所も聖域ではなくなった
- そこで、不要なサービスを削ぎ落した安い事務所へ移る
いかがでしょうか?経営者の思考は理解できましたでしょうか?
そもそも、月次(隔月)訪問というモデルは会計事務所のためのサービス
なぜ、そうなるかと言いますと、元々、小規模零細企業は税理士事務所の方に毎月 or 隔月 or 3ヶ月に1度、定期的に来て相談をしたいとは思っていません。でも、「税理士事務所と付き合うには顧問契約をしなければいけない」と言うから、仕方なく毎月 or 隔月 or 3ヶ月に1度の訪問を受け入れていた訳です。
ところが、コロナが発生して困っている時に、十分な対応をして貰えなかったのは低単価の顧問先も同じで、ただ「うちは顧問料が安いから仕方ないんだ」とあきらめていた訳です。
でも、2021年に入って税理士事務所の顧問料を引き下げるのであれば、「不要なサービスを削ぎ落し、必要なサービスだけに絞って安い事務所にお願いしよう」という動きが顕在化するのがこれからなのです。
では、会計事務所はその流れにどう備えれば良いのか?
では、その流れに会計事務所はどう備えれば良いのか?ということですが、答えは、低価格でも利益が出る顧問料(顧問契約)を再設計するということです。
もしかしたら、お読みの皆様もそうかも知れませんが、今でも多くの会計事務所の先生方は「安い仕事はしたくない。だから単価の高い仕事を獲ろう!」と考えています。なぜなら、単価の安い仕事は儲からない(と思う)からです。
でも、単価の高い仕事を獲ると言っても、既に昨年、コロナで十分な対応ができず、多くの会計事務所はお客様から解約を受けているのではないでしょうか?また、世界的にも経済が停滞し、お客様の業績も悪化し、税理士事務所には「必要なことだけしっかりやってくれれば良いよ」という考えの方がお客様のニーズに合っているのではないでしょうか?
であれば、低価格サービスを望むお客様は増えるのであれば、そういう方々の声に真摯に耳を傾け、低価格でもしっかり利益の出る商品を準備をすることが必要だと思います。
一方で「税理士事務所にはしっかりサポートして欲しい」というお客様もいらっしゃいますので、その方向を目指したいというは「単価が高くてもしっかりサポートする商品をつくり、お客様の期待に応えられるように準備すること」が重要であると考えます。
週刊ダイヤモンド 2021年2月13日号 税理士業界特集についてその1