人事制度構築(等級・賃金・評価)
若者にとっては「人事制度がない事務所なんてあり得ない」が通常の感覚です。
会計事務所の人事制度が特殊な理由
売上の大半を占める顧問報酬ですが、総じて古くからお付き合いしている顧問先の報酬は低いものです。かつ、そこを担当しているのは実力のあるベテランであることが多く、売上とスキル等が必ずしも連動していません。
また、単価は高いが手がかかるお客様や単価は低いがほとんど手が掛からないお客様など様々で、それらをどう評価するのか?といった難しさは会計事務所特有のものと言えるでしょう。
理由1とも関係しますが、著しく成果に焦点を当てた制度を作った場合、「単価が安くで手が掛かるお客様」の引き受け手がいなくなる可能性がありますが、会計事務所においてある一定割合は「単価が安くで手が掛かるお客様」が発生するものです。故に、引き受けてが適正に評価される仕組みをどう作るのか?会計業界における人事制度構築の難しさであると言えるでしょう。
会計事務所の業務においては、簿記3級→簿記2級→税理士科目合格→税理士と、ある程度資格とスキルは連動しますが、身に着けたスキルと事務所への貢献度合いは必ずしも連動するものではありません。
しかしながら、多くの事務所ではスキルアップに伴って基本給を上げているケースが多く、基本給と貢献度合いのミスマッチが起きています。このミスマッチをどうするか?なども会計業界独特と言えるでしょう。
会計事務所においては一般法人の他、医療法人・社会福祉法人、資産税関連など、担当が混在していたり、部署自体が分かれている事務所もあることでしょう。この場合、各分野・部門では利益率が異なるため、単純に売上や件数では測れないものがあります。これらを個人別評価にどう落とし込んで行くかも思案のしどころとなります。
事務所を拡大するためには管理職orリーダーのマネジメント能力が重要視される訳ですが、会計事務所の仕事はある程度の専門性が求められるため、専門知識は申し分ないが、対人能力orマネジメント能力に乏しく、人をつけても定着させられない経験者が一定割合では存在します。故に「専門知識はあっても人を扱うことが苦手な経験者」の居場所≒キャリアプランをどう用意するかも重要な課題となってきます。
そこで、会計事務所の人事制度を構築する際は、これらの「会計業界独特の課題」を理解した上で構築しませんと「作ったけれども役に立たない制度」になってしまう可能性がありますので、誰に任せるか?は慎重に検討しましょう。
テーマ1.最近の若者研究を通じてわかったこと
このところの採用難を背景に「最近の若者の研究」を弊社なりに行いましたので、以下にその内容を踏まえて解説させていただきますが、その前に、皆様の事務所では下記のような質問を応募者or 既存の若手職員の方から受けたことはありませんか?
若手職員からよく聞かれる質問事例
●こちらの事務所にはどういう教育カリキュラムがあるのでしょうか?
●こちらの事務所では入所後、どういう方法で教育しているのですか?
●先輩、うちの事務所で5年くらい勤めると、お給料はいくらくらい貰えるのですか?
●〇〇さん、うちの事務所ってどういう仕組みで給料を決まっているのですか?
●事務所の各種既定を見たいのですが、誰に言えば見せてもらえますか?
上記は全て、弊社でお付き合いのある会計事務所の若手職員から出た質問事例です。皆様の事務所でも似たようなことを聞かれたことがあるのではないでしょうか?
そしてその際、「今どきの若い奴らは面倒臭いな」とか「厄介な奴が応募して来たな。うちみたいな規模の事務所にそんなものある訳ないだろう!」と思いませんでしたでしょうか?
ロールプレイングゲームで育った若者たちの思考とは?
みなさまもドラゴンクエストに代表されるロールプレイングゲーム(RPG)は何となくご存知だと思いますが、今の若者は幼い頃からこういったRPGに馴染んでいます。
また、RPG以外の各種ゲームでも、点を取る・ポイントを上げるための手順や方法を誰もが事前に理解した上で、戦略を立てて取り組んでいます(プレイしています)
ですから、上記のような質問をされるとされた方はビックルするかも知れませんが、「これから働き始める前に将来のキャリアプランを考える・確認することは当然」のことなのです。
まずは、前提条件が以前とは異なっていることをご理解下さい。
テーマ2.所長先生はなぜ評価制度を作りたいのか?
ところで、ある程度職員数が増えて来ると「そろそろうちの事務所も評価制度をつくらないとダメかな?」と考える方が多いですよね。では、なぜ多くの経営者の方は評価制度を作りたいと思うのでしょうか?
人件費総額をコントロールしたい
- 増加傾向にある人件費をコントロールしたい
- 頑張った人とそうでない人の昇給・賞与に差を付けたい
- 会社の利益を確保するため
組織の活性化
- 職員のモチベーションのアップ
- 昇給・賞与に対するメンバー間の不公平感の除去
- 事務所として明確なキャリア・ビジョンを示すため
つまり、多くの所長先生は「評価制度」を作りたいのではなく
1.事務所の業績と人件費を連動させ、安定的に経営できる仕組みを作りたい
2.自らが求める働き方を職員の方々に示したい
のではないでしょうか?
もしそうであるならば、つくるべきは「評価制度」ではなく「人事制度」です。
人事制度とは?
では、人事制度とは一体何を指すのでしょうか?
1.等級制度
等級制度とは平たく言えば、所長が担って欲しい働き方を昇給や賃金と連動させるために段階上に設定したものです。
会計事務所で良く聞かれる不満に
- 課長としてそれなりの給料を払っているのだから、給料に見合った働きをして欲しい
- もう3年目なのだから、〇〇くらいは一人でできるようになって欲しい
というものがありますが、例えば、G3等級に上がるためには〇〇と✕✕ができなければ上がれない、課長になったら〇〇と✕✕ができなければ降格になる、あるいは昇給はしない、といったことが明示されていたら、個々人の働き方は変わると思いませんか?
2.賃金制度
賃金制度とは、先ほど例に挙げました「うちの事務所で5年くらい勤めるといくらくらい貰えるのですか?」を具体的な賃金まとめたものです。(右はモデル賃金の例)
職員の方々は「頑張れば〇年後には年収〇万円くらいになるなら頑張ろう!」という見通しがあれば頑張りますが、「うちの事務所は頑張った人にはきちんとボーナスも出すのだから頑張れ!」といくら言っても、きちんと決められたものがなければ職員からしたら「空手形」を切られたようなものですよね。
また、賃金制度があるから、今いるスタッフが成長した際の人件費総額の予測もできるため、人件費総額のコントロールも可能となる訳です。
3.評価制度
最後は評価制度です。
一般的に人事制度と言いますと「評価制度を作ること」のイメージがありますが、弊社の優先順位としましては、1.等級制度⇒2.賃金制度⇒それらをつなぐものっとして3.評価制度 があると考えています。
実際のところ、「賃金制度」という裏付けのないまま、イケイケで評価制度を作って、危うく人件費倒れになりそうな事務所もあるようです。
また、私は事務所の規模によっては評価制度はなくても良いと考えています。
以上、人事制度について解説いたしました。
冒頭にもお伝えしましたように、最近の若者は「キャリアプランが描けない事務所」には入社しませんし、入社しても早期に辞めてしまう傾向があります。
是非、今後も若手を中心に採用し、事務所を拡大して行きたいと考える皆様は、是非この機会に人事制度の構築もご検討下さい。
料金・期間等
料金・期間は、構築する制度の内容・対象となる社員/職員の人数、部門数によって異なりますが、20名以下の事務所を例に記載いたします。
1.小さな事務所の人事制度構築(簡易版)
20名以内の事務所に必要なことは「評価制度」ではなく
- 若手社員に「〇年経ったら自分がどうなるか?」を明確に示すこと
- 昇級・昇格するにはどうすれば良いのか?といったルールを示すこと
- 「社員にはこういう働き方をして欲しい」という所長の思いを制度化することです。
内容 | 2.管理職や職員の職位・年次に応じ、期待する役割の明確化 3.上記をベースとした等級の規定と標準到達等級の設定 4.各等級における職務内容及び昇級・降級基準の検討 5.期中・期末の個別面談時に使用する評価シートの作成 6.社内配布用資料の作成 | 1.現状分析
期間 | 3ヶ月程度で、打ち合わせ回数は3~4回程度 |
料金 | ※訪問の場合は別途交通費(実費)を頂戴いたします。 ※移動に片道2時間を超える地域は割増料金を頂戴しますので、オンラインをお薦めいたします。 | 52.5万円~(税別)
2.会計事務所の人事制度一式(等級制度・賃金制度・評価制度構築)
職員のキャリアプランの明確化による人材の定着、職員に期待する役割の明確化による「理想の事務所運営」の実現、人件費の総額コントロールを目的としたコンサルティングです。
内容的には等級制度に加え、賃金制度・評価制度一式を構築します。
内容 | 2.理想の事務所運営を可能にする等級制度の構築 3.等級制度と連動した「賃金制度」の構築(基本給・各種手当・賞与等の設定) 4.評価制度の構築 5.社内説明会の実施と配布用資料の作成 | 1.現状分析
期間 | 6~7ヶ月程度で、打ち合わせ回数は8~10回程度 |
料金 | ※訪問の場合は別途交通費(実費)を頂戴いたします。 ※移動に片道2時間を超える地域は割増料金を頂戴しますので、オンラインをお薦めいたします。 | 150万円~(税別)
3.20名を超える規模の方は、ご相談下さい。企画いたします。
問合せ・ご相談
まずはお気軽にご相談下さい。初回相談は無料です。
来所でもオンラインでもどちらでも対応可能です。