規模別経営課題

会計事務所「売上規模と成長の壁」

上記は、これまで15年を超える会計事務所のコンサルティングを通じて分析した「会計事務所の売上規模に応じた成長の壁」を図にしたものです。
弊社では会計事務所の売上規模に応じた成長の壁は、以下の3つの近辺にあると考えております。

  1. 売上3,000万円の壁
  2. 売上7,000万円の壁
  3. 売上1億2,000万円の壁

紙面の関係ですべてを網羅することはできませんが、各段階における所長のマインドとマーケティング&マネジメント上の課題のエッセンスを下記に記したいと思います。

1. 売上3,000万円の壁

まず最初は売上3,000万円の壁です。

統計的にも開業されている税理士事務所の65%は、売上3,000万円未満ですので、多くの方がここに属していると言えます。

もちろん、中には初めから事務所を大きくするつもりがない方もいらっしゃいますが、それを差し引いても売上3,000万円を超えることは最初の大きな壁であると言えるでしょう。

では、どうしたら売上3,000万円の壁を超えることができるのでしょうか?

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基本テーマ:顧客の獲得

まず、この段階の基本テーマは顧客の獲得=売上の確保です。

開業して1,000万円に満たない段階と3,000万円一歩手前という段階では、経営の余裕度は全く異なりますが、これから人を入れて事務所を拡大したいと考えた場合、3,000万円に満たない状態では決して十分とは言えません。

ですので、この段階の基本テーマは何としても売上を創ること・増やすことです。

生活レベルを上げずに1日も早く人を採用する

では、どうしたら良いのか?ということですが、事務所を拡大する最初のステップは、一日も早く人を採用することです。

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この規模の場合、最初は所長先生が外へ行って、奥様やパートさんが内部で処理をするという体制の方が多いかと思いますが、この体制でも少し頑張れば、売上1,500万円~1,800万円くらいは行くのではないかと思います。

そういう意味では、この段階で先行投資をして人を入れるのが最も良い方法なのですが、売上1,500万円~1,800万円くらいになりますと普通のサラリーマンよりは少し高い年収を手に入れることも可能ですので、多くの場合、ご自身の生活レベルを上げてしまいます。

生活レベルを上げなければ300万~400万円、つまり人ひとり雇うくらいの余裕はあるはずなのですが、住まいや車、飲食その他に使ってしまい、人を入れる余裕がありません。

ですから、この段階では「生活レベルを上げずに人を雇う」ことが事務所拡大の最大のポイントです。

付き合う人を変える

次に取り組んでいただきたいのが「付き合う人を変える」ということです。
これには2つの視点がありまして、一つはご自身のメンタルブロックへの影響、もう一つは営業上の影響です。

メンタルブロックへの影響

多くの場合、開業直後は同じような時期に独立した税理士仲間や他士業の仲間と一緒に勉強会を始めたり、情報交換会を行ったりされると思います。
決してそれが悪いということではないのですが、もしあなただけが成長し始めて、周りが上手く成長できない場合、他の仲間が「〇〇さん、働き過ぎだよ。少しは休んだら」とか「〇〇さん、最近仕事ばかりで付き合い悪いなあ」といった感じで、伸びようとするあなたの妨げとなることが多々あります。 もし、そのような点にお心あたりのある方は、早めに付き合う人を変えることをお薦めします

営業上の影響

開業して新規の顧客を獲得する場合、一般的には知人・友人・家族・他士業の仲間といった旧知のネットワークを活用して増やされたことと思います。
しかし、よほど広い人脈を持つ友人でもいない限り、そこからの紹介も枯渇し、売上も低迷します。
ですから、以前からの仲間を切るということではありませんが、新たな人脈を求めて①「人の居る場所に積極的に顔を出す」という行動と、人脈のみに頼らない②新たなマーケティング活動にチャレンジすることが必要です。

2. 売上7,000万円の壁

次に直面するのが売上7,000万円の壁です。

個人的にはこの「売上7,000万円の壁」が最も厄介な感じがします。


と言いますのは、ここから先は所長の馬力だけでは何ともならず、考え方と日々の習慣を変えないことには突破できないからです。

それでは解説いたします。

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「小成功病」に陥らない

「小成功病」という言葉を初めて聞いたという方も多くいらっしゃるかも知れません。気を悪くされたら申し訳ありませんが、それは「さしたる成功を収めている訳ではないのに、既に成功者になった気分に浸ってしまう心の状態」を言います。

先ほども申し上げたように、開業されている税理士事務所の65%は、売上3,000万円未満ですので、5,000万円~7,000万円の規模になってきますと、巷の税理士事務所の倍近い売上となる訳です。
当然、税理士会に行っても、親しい仲間と話しても「〇〇先生は凄いですね」「〇〇先生は稼いでますね」と言われますので気持ちが悪いはずはありません。
また、ご自分の年収も取る気になれば2千万円以上も可能になるでしょうから、「まあ、俺も(私)も良くやったな」とか「このまま60歳過ぎまで行ければ十分だな」と思うのは当然のことでしょう。

ですから、この「小成功病」を乗り越えるように、自身のマインドやモチベーションをコントロールすることが最も重要な課題となります。

尚、前項で「付き合う人を変える」必要性をお伝えしましたが、弊社で主催しております会計事務所5%倶楽部®には、売上5,000万円くらいから8億円近い事務所が在籍しております。多くの事務所が売上5,000~6,000万円の時に参加されて、今では1億2,000万円~1億6,000万円程に拡大されていますので、この勉強会に参加いただくことも、事務所拡大のきっかけになるかと思います。

新たなリソースを追加する

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私はよく“リソース”という言葉を使うのですが、リソースとは「資源とか資金とか時間」といったような、事業を行うために必要なものを指します。

話を元に戻しますが、売上7,000万円の壁といっても、売上7,000万円を上げるということは大変なことで、ここまで来るまでに1)所長の能力、2)所長の限りある時間、3)所長の限られた人脈、4)今いるスタッフの能力、5)今いるスタッフの労働力、といった全てを費やして来た訳です。


ですから、あまり気を悪くしていただきたくないのですが、多くの場合、売上7,000万円の壁に直面する頃には「既にリソースが枯渇してしまっている」のです。

そうであれば取るべき対策は

  1. 新たなリソース(今までやっていなかった新たな分野・事業・商品)を取り入れる
  2. リソースを持った人材(月次担当者ではなく、異なる能力を持った職員・資格者)を採用する

とこととなります。
これは、従来の「仕事があるから担当者を増やす」というのとは考え方が違いますのでご注意下さい。

マネジメントスキルを習得する

売上7,000万円と言いますと、職員の方々の人数も7〜10名前後とだいぶ増えて来ることでしょう。そして、この規模になると職員の離退職が増え、新たに採用して教育をするとまた辞めて、といった負のスパイラルに陥ります。なぜでしょうか?

それは、今までの「所長の顔を見れば考えていることがわかる」「所長が好きなこと・嫌いなことくらいわかる」といった気心の知れたメンバーだけでなく、全く価値観の異なる職員が多数出入りするために、事務所の風土が変わってしまうところに、大きな原因があります。

つまり、明らかに事務所の成長ステージが変わって来ている訳ですから、所長先生も今までのやり方では人が動かないことに気付かなければなりませんし、人を扱うためのスキルも身につけなければなりません。

ブログ「売上7,000万円前後の所長の悩みとは?」はこちら

3. 売上1億2,000万円の壁

売上7,000万円の壁をようやく突破すると次に出てくるのが売上1億2,000万円の壁です。

正直申し上げますと他の壁とは異なり、1億2,000万円の壁には幅がありまして、個人的には1億円~1億6,000万円くらいまであります。
ですから、正確には1億2,000万円ゾーンと理解いただいた方が良いかもしれません。

事務所を大きくするだけの大義を持つ

前項で「小成功病」について触れましたが、統計的には売上1億円を突破している会計事務所は全体の5%にも満たないですので、このクラスになればある意味“成功事務所の仲間入りをした”と言っても良いのではないかと思います。

それゆえ、多くの先生方がこの段階で「ああ、俺(私)も良くやったな。もうこの位でいいかな?」とか、「最近人も採れないし、折角採ってもすぐ辞めるし、これ以上辞められるのは辛いからもう事務所の拡大はいいかな?」とか、「これ以上大きくするモチベーションがわかないんだよな」と感じ始めるようです。皆様はいかがでしょうか?

ではどうしたら良いか?ということですが、私個人的には大きくすることだけが良いこととは思いませんので、無理に大きくする必要はないと思います。

ただ、もし大きくしたいのであれば、何か「大義」を持たないと自分自身のためにも、職員の人心を束ねる面でも難しいかと思います。

まずは
①ご自身が大きくして何を実現したいのか?
②誰のために大きくしたいのか?
③大きくするために直面する様々な苦労を乗り越える覚悟があるか?

を改めて考えておく必要はあると思います。

専門家を目指すのか?事業家を目指すのかを決める

それでも事務所を拡大するのだ!と決めたならば、次に考えるべきは、専門家を目指すのか?事業家を目指すのか?を決めることです。

売上1億2,000万円前後までは、専門家型の会計事務所でも代行業務型の会計事務所でも頑張れば大きくできますが、ここから先は専門家を目指すか事業家を目指すかで目指すビジネスの方向性が変わってきます。

端的に言って、専門家型の場合には高単価・高粗利で人数もさほど多くはならないでしょうし、事業家型を目指すのであれば、ある程度誰でもできる処理業務も行いながら、人的規模を拡大することになるでしょう。

お問合せ・ご相談

尚、現在の事務所がどの段階かによって所長先生が抱える悩みも様々だと思いますので、これらの悩みを解決して、更に前に進みたいという事業意欲溢れる皆様はこの機会にご相談下さい。

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