会計事務所のビジネスはなぜ厳しくなったのか?
今、多くの税理士事務所の方々に、「税理士事務所を取り巻く環境は厳しいか否か?」と質問すれば、ほとんどすべての事務所の方が、「まあ、それは厳しいよ」とお答えになることでしょう。皆様はいかがでしょうか?
では、なぜそんなに厳しくなったのか?と言えば、「ITを含めたクラウド化の進展や税理士事務所に対する顧客の意識が変わったから」と外部環境の変化を挙げられる方が多いことでしょう。
ただ、「外部環境の変化」を更に突き詰めれば、私は「税理士業界以外の方々に川上を押さえられてしまったから」だと考えています。
例えば、この10年~15年を振り返ってみても、以下のように税理士事務所は川下川下に追いやられ、顧客接点を奪われてしまったのではないでしょうか?
- 税理士紹介会社に「税理士探し」のポータルを取られてしまった
- 相続税申告の入口を「やり手の司法書士や行政書士」、相続ビジネスを狙う他の方々に押さえられてしまった
- 一頃流行った「会社設立 ⇒ 顧問契約モデル」 はMFとFreeeに押さえられてしまった
- 法人顧問契約も「MFとFreee、楽楽精算等、システム会社等」に押さえられた(組み込まれた税理士に流れる)
上記はその代表的な例ですが、こうして振り返ってみれば、税理士が川下へ川下へと追いやられてしまったことは事実でしょう。
話は変わって、少しだけ弊社の成功事例をお話させて下さい
話は変わりますが、少しだけ私のお客様の話をさせて下さい。
私は今から14年ほど前、業界に先駆けて「相続ビジネスの立ち上げ」を提案させていただきました。まだ多くの税理士さんが「相続税なんてスポット業務だからビジネスにはならないよ」とか、「うちの事務所は相続税申告は年2件くらいはやっているから、結構相続税は強い方だよ」と今なら信じられないようなことを言っていた時代です。
そんな状況の中で、「相続財産が1億円~3億円未満の層は、まだ税理士がついていない人がたくさんいるのでWEBで狙えますよ!」と提案いたしました。
そして、あれから14年経ちますが、このセミナーをきっかけに相続ビジネスを立ち上げて、相続ビジネスが事務所の柱となっている事務所はいくつもあります。具体例を挙げますと
- 相続税申告関連だけで、月間売上2,000万円を上げている事務所
- 当時の相続税申告件数は「年間2件程度」だったのが、今では年間100件超を行っている事務所
- 同じく、相続税申告だけで年間3,000万円を超える事務所など
では、何が原因で、この厳しい環境下でこのような成果を生むことになったのか?と言いますと
それは、立ち上げ時こそインターネットでも集客しましたが、当初から私がお客様と一緒に行っていたことは、
- 葬儀社ルートの開拓
- 司法書士ルートの開拓
- 金融機関との関係強化
- 郵便局でのハンドブックの配布
- 大企業の労組へのアプローチ
といった、その時々で考えられる全てのルートとの関係構築を行ったことです。そして、今では受注の70%程度が上記にルートから受注しています。
実際、先週末も「当初からお手伝いしている相続中心の事務所」が弊社にお見えになったのですが、お話を伺いましたら、あれ以来、20を超える特定郵便局との関係を強化し、ハンドブックを年間5,000冊も配布し、そこから相続税申告を50件以上受注できている、とおっしゃっていました。
では、なぜ、私が当初からそのようにアドバイスをし、提案してたのか?と言いますと、それは
- インターネットは所詮広告費の勝負なので、後から参入した人に簡単に逆転されてしまう
- 対するチャネル開拓は「時間とお金と労力」が掛かるので、立ち上げは大変だが、構築できれば簡単には逆転できないから
- 社会的地位や立場に関係なく、所詮「入口を押さえた者が勝つ」と思っていたから
- そして、その入口商品は「税理士業務である必要はない」と考えていたから
という原理原則に沿ったアドバイスをさせていただいていたからです。
では、会計事務所はこれからどうすれば良いのでしょうか?
では、会計事務所はこの厳しい環境下でどうすれば勝ち残って行けるのか?ということですが、それは「今後も変わらぬ原理原則である以下の5つ」に取り組むことです。
1.少しでも先に、誰よりも先に、直に顧客と接触する場をつくり
2.そこでの人間関係を構築し、育む
3.顧客接点となる可能性があるならば「税理士事務所の事業ドメイン」を超えて前にでること
4.そして、人手が掛かるので、営業のできる人材を採用すること
5.即効性に惑わされず、地道に継続的に行うこと
私の書籍か弊社ホームページかは忘れましたが、以前から「50人規模の事務所になったら資本主義の荒波に揉まれる覚悟が必要」と言っていましたが、最近は「50人規模の」という前提条件が外れ、全ての事務所が「資本主義の荒波に揉まれる覚悟が必要」となったような気がします。
是非来年は、長期的・本質的・大局的に物事をみて、原理原則に沿った営業活動をして行きましょう。