税理士事務所の規模別経営課題

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会計事務所の規模別分布」

上記は「令和3年経済センサス調査と平成21年経済センサス調査データを対比し、弊社で加工作成したものです。
近年、個人事務所の廃業と会計事務所の統廃合も進み、従業員数2人~9人以下の事務所数の減少部分(赤字)が、そのまま従業員10人~99人前後の事務所の増加分となっていることが読み取れます。

また、経済センサスのデータによれば、従業員1名あたりの売上高は、10名以下の事務所が約800万円/人19人以下が940万円/人29人以下が約900万円/人30人以上が約1,100万円超となっていますので、一人当たり売上から逆算しますと「会計事務所の売上規模別分布」はおおよそ上記右の円グラフのようになります。

大まかには

  1. 売上3,200万円の事務所が全体の63%
  2. 売上7,200万円以下の事務所が全体の26%(累計89%)
  3. 売上1億8,000万円以下の事務所が全体の9%(累計98%)
  4. 売上1億8,000万円以上の事務所が全体の2%

ということがわかります。

そこで、事務所規模に応じた強みと弱みを以下に整理してみましょう

 税理士事務所の規模別強みと弱みとは?

1.一人税理士事務所&小規模事務所

区分強み弱み
経営面オフィスや人件費といった固定費が低く、収益がそのまま利益につながりやすい。
経営者の判断ですぐに方針転換やサービスの変更が可能で、経営の自由度が高い。
固定費が低いため、わずかな売上の増加でも利益を出しやすい。
クライアントとの関係性が強固で、状況に応じた迅速な対応が可能となる。
所長&職員の病気、休暇、引退などを理由に業務が停止するリスクが高い。
優秀な人材の採用と教育体制の整備が難しく、専門性の高い人材を揃えにくい。
人的資源に限界があるため、売上の大幅な成長が難しい。
主要クライアントの離脱が経営に与える影響も大きい。
市場面所長と地元の経営者との関係性をそのまま顧客獲得につなげやすい。
意思決定者が一人のたため、圧倒的な機動力とスピードで市場やクライアントニーズに対応できる。
クライアント一社一社の状況に合わせたオーダーメイドなサービスを提供できる。
事務所の規模が小さいため、大手企業や上場企業が求める実績、組織的な信頼性、大規模案件の処理能力の面で劣り、大型クライアント・優良顧客の獲得が難しい。
対応できる業務の分野や量が個人の能力・時間に依存するため、大規模で複雑な案件や広範囲のニーズに対応できない。

2. 10名~50名規模の事務所

区分強み弱み
経営面ある程度の人員がいるため、ITや事務コストの効率化を図りつつ、大型事務所の様な過大な固定費リスクは避けられる。
事務所としての一体感を保ちつつ、組織での情報共有やチームの連携はしやすい。
一定の規模があるため、「一気通貫」や「専門性」を求める職員は採用しやすい。
大規模事務所ほどの人材採用・人材教育は難しいので即戦力中心の採用となる。
優秀な管理職が育たないと、経営者自身が事務所経営に費やす時間が枯渇する。
組織の拡大≒硬直化に伴い、自由度を求める人材やブランド名を求める人材の大手への転職や独立が増えやすい。
市場面地域での知名度&人脈を活かした営業活動・受注活動ができる。
大手事務所の敷居の高さと、小規模事務所の信頼感のなさを補える規模である。
大手事務所と比べ、顧問料が手頃である。
小規模事務所では扱えない中堅企業や成長企業の複雑なニーズに対応できる。
大規模事務所ほどの人材採用・人材教育は難しいので即戦力中心の採用となる。
優秀な管理職が育たないと、経営者自身が事務所経営に費やす時間が枯渇する。
組織の拡大≒硬直化に伴い、自由度を求める人材やブランド名を求める人材の大手への転職や独立が増えやすい。

3. 大型事務所

区分強み弱み
経営面チェック体制やコンプライアンスなど、リスク管理体制がしっかりしている。
教育制度、人事制度等が整っており、質の高い人材を安定的に採用できる。
ITや各種システムなど、大規模な投資を行う余裕がある。
従業員の人件費やオフィス賃料などの固定費が大きく、高コストになりやすい。
管理が行き届かなくなるため、頑張る人と頑張らない人が混在し始める。
部門間、階層間の情報伝達が複雑になり、機動力とスピード感が損なわれる。のため、クライアントと代表者&幹部の関係性が希薄。
市場面専門能力を有する人材が豊富で、高度なクライアントニーズにも対応可能。
複数の部門、他士業なども内包し、広範なニーズにワンストップで対応できる。
事務所の規模が信頼と安定性の証となり、市場における知名度とブランド力がある
金融機関や有力企業等との関係構築もしやすく、紹介案件や優良顧客が多い。
大規模事務所故にボリュームゾーンである小規模零細企業から敬遠されやすい。
顧問料も高いため、価格競争力で劣る。
ニッチな専門分野や小規模なクライアントの細やかなニーズへの対応が困難。
会社対会社の関係性のため、クライアントと代表者&幹部の関係性が希薄。

税理士事務所の規模別成長戦略

1.一人税理士事務所&小規模事務所

一人税理士事務所&小規模事務所は「クライアント企業との強固な関係性」が強みです。
また、少数の「信頼できるメンバー」が要れば、「税務財務を中心としたコンサルティング」を事業の柱に据えることも可能です。

そのために今後整備すべきことは

  1. 顧問契約とコンサルティングサービスの区分(コンサルティングサービスの商品化)
  2. 既存クライアントを起点とした紹介獲得の仕組みづくり
  3. クライアントニーズに対応できるように他士業やビジネスパートナー企業との関係強化

2.10名~50名規模の事務所

10名~50名の中規模事務所は「小規模事務所にはない安心感と手頃な顧問料」にあります。故に、売上1,000万円超~1億円未満の小規模零細企業を中心としたボリュームゾーンでしっかりと売上&利益を稼ぐことがポイントです。

そのために必要な施策は

  1. 低~中単価でもしっかり儲かる(時間単価1万円超)の「顧問料の再設計」が必須です。
  2. そのために、時短社員やパート社員で業務の廻る組織体制の整備がセットで必要です。
  3. 更に優秀な社員の定着と早期戦力化のための「人事制度の構築」にも取り組みましょう。

3.大型事務所

大型事務所の強みは安定的な人材の採用力と金融機関や大手企業から、安定的に「優良顧客を獲得できること」にあります。
反面、顧問料の高さから小規模~中規模企業には敷居が高い面もあります。

そのために今後取るべき施策は

  1. 多くの大規模事務所が敬遠している低~中価格帯の商品を設計し、ボリュームゾーンを狙う
  2. 低~中価格でも採算が取れる顧問料を設計し、若手職員の生産性と早期戦力化を図る
  3. 顧問料の高さの陰で「実は生産性が合っていない現実」を直視し、顧問料を再設計する

問合せ

以上が税理士事務所の経営課題と今後に向けての対策です。
弊社では事務所規模と事務所の課題に応じたコンサルティングサービスを行っています。

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